
「対話型組織開発」という2018年に出版された本をご存知でしょうか。
私はこの本を紹介してもらった時に、私が今までそしてこれから挑戦したいと思っていることが、体系化されているなら読まない手はないと思い、早速購入しました。
手元に届いてみると、辞書かと思う厚さ。ページをめくるとなかなかに難解……一人で読み進めるなんて到底ムリと悟りました。
読書会にしたらみんなで読める!
こんな時は、様々な視点から考えを寄せ合うのが一番!
ということで、読書会の開催を決意。声をかけてみたら11人が集まってくれました。月1回1時間、オンラインで集まって、その日読む5ページほどをカメラオフ・マイクオフで静かに読み、読み終わったら気になったこと・疑問に思ったことを持ち寄って対話する。そんな読書会をもう2年半続けていて、今月ようやく229ページまで読みました。亀ペースですが、メンバーは2人増えて現在13名。忙しい中でも集まってくれるメンバーのみなさんに感謝です。

この本は、わかったと思った次の瞬間にわからなくなる難しい本ですが、みんなで解釈を持ち寄ることで少しずつ解けていく感覚があります。「一人で読んでいたら絶対に途中でやめていた」とみんながよく口にしています。難しさを共有しながら読む、それ自体がこの本との向き合い方として合っているのかもしれません。
このシリーズは、その読書会でのインプットを私なりにアウトプットしてみる試みです。対話型組織開発の正確な解説というより、私自身の理解と感想として読んでいただけると嬉しいです。
そもそも「組織開発」って何?
OD(Organization Development)=組織開発という言葉、聞いたことはあるけどよくわからないという方も多いかもしれません。人事や組織コンサルティングの文脈ではたまに登場するけれど、日常にはあまり馴染みがない言葉かもしれない。
本書によると、日本企業はこれまで組織のハードな側面——戦略、部門の構成、制度、仕組み、業務プロセスなど——の変革に力を注いできました。バブル崩壊後には合併やリストラ、成果主義の導入、ITの活用など、大きな変革を短期間で次々と実施してきたのです。
でもそれだけでは組織がうまく機能しないことを、経営者やマネジャーたちは経験してきました。ハードな側面を整えても、人と人の関係や職場での会話のあり方が変わらなければ組織は変わらない。たとえば制度を変えても「どうせまた変わる」という空気が残ったり、新しいツールを導入しても誰も使わなかったり。こういった経験、思い当たる方も多いのではないでしょうか。
そこから生まれてきたのが「組織開発」という考え方です。
組織開発とは、組織の「人と人の関係」「コミュニケーションのあり方」「職場の文化」といったソフトな側面に働きかけることで、組織全体の健全さや機能を高めていくアプローチです。構造を変えるのではなく、そこで働く人たちの関係性や会話の質を変えていく——それが組織開発の核心にあります。
近年、日本でもODへの関心が急速に高まっています。心理的安全性やエンゲージメント、ウェルビーイングといった言葉が職場でよく聞かれるようになったのも、組織のソフトな側面への注目が高まっているあらわれと言えるかもしれません。
診断型と対話型、2つのアプローチ

組織開発には大きく2つのアプローチがあります。「診断型OD」と「対話型OD」です。この本はその違いと、対話型ODとは何かを深く掘り下げています。
診断型ODは、専門家(コンサルタント)が組織の現状を診断し、問題を特定して解決策を提示するアプローチです。アンケートやインタビューでデータを集め、分析して「御社の課題はここにあります。こう改善しましょう」と示していく。目指すべき状態をあらかじめ設定して、そこに向かって計画的に変革を進めていきます。医師が患者を診察して処方箋を出すイメージに近いかもしれません。
対話型ODは、対話を通じてメンバー自身が現状の見方や前提を問い直し、新しい意味と変化を生み出していくアプローチです。専門家が「こうすべき」という答えを持ち込むのではなく、組織の中にいる人たちが対話を通じて自分たちの現実を捉え直していく。着地点はあらかじめ決まっておらず、対話のプロセスを通じて何が生まれてくるかを大切にします。
一見すると診断型のほうが効率的に見えます。問題が明確になり、解決策も示してもらえる。ゴールが見えやすくコスパよく進められる印象があります。実際、多くの組織が組織変革の場面で診断型アプローチを選んできました。
ただ本書によると、2つの本質的な違いは「方法」ではなく、その背景にあるパラダイムやマインドセットにあるといいます。これについては次回以降で深めていきます。
なぜ、みんな診断型に向かうのか

対話型のほうがより本質的なはずなのに、なぜ多くの組織は診断型を選ぶのだろう。
日本のマネジャーの多くはバブル期やその崩壊直後に「指示命令型マネジメント」のもとで育ってきました。上司が方針を示し、専門家が答えを出し、部下がそれに従って動く。そのスタイルは「すでに解き方がわかっている問題」には確かに機能します。そして診断型ODとも相性がよいのです。
ところが今の時代は様相が変わってきています。技術の急速な発展、業務内容の複雑化、先が読みにくい環境変化の中で、既存の経験や知識では解けない問題がどんどん増えています。正解が一つに決まらない、専門家でも答えを持っていない。そんな「適応を要する課題」に直面する場面が増えているのです。
それなのに、慣れ親しんだ指示命令型のスタイルのまま診断型ODを選び続けてしまう。本書はそんな構造を示唆しています。
「対話型は着地点が見えない、時間がかかる」そう言われることがあります。でも考えてみると、人間が関わっているのだから当然ではないでしょうか。答えが最初から決まっているなら対話は要りません。不確かさの中でみんなで考えるからこそ、対話に意味があります。複数の人間がそれぞれの経験や考えを持ち寄るプロセスを、タイパで測れるかというと、そうじゃないと私は思っています。
だから、みんなで読んでいる
私がこの本を仲間と読んでいることも、ひとつの「対話型」の実践といえます。分厚くて難しい本を一人で正解を探すのではなくみんなで解釈を持ち寄りながら少しずつ解いていく。そのプロセス自体が、対話型ODの考え方と重なっています。
読書会で対話していると、書かれていることがそれぞれの職場でのできごとにリンクすることも多々あります。本の言葉が参加者それぞれの現実と結びついて意味を持つ瞬間があって、それがまた面白い。一人で読むのとは全然違う読み方ができています。
また、それぞれに気になるポイントが異なることも、理解を深める上で大切なことだと感じています。一人で読んでいたらスルーしてしまうところを、誰かが拾って問う。それが一人では得られなかった視点を与えてくれます。
次回からは対話型ODの理論のところに入っていきます。
まとめ

組織開発(OD)は、組織のハードな側面だけでなく人と人の関係性や会話のあり方に働きかける考え方です。その中に「診断型OD」と「対話型OD」という2つのアプローチがあり、多くの組織がコスパやタイパを重視して診断型を選んできた背景には、専門家が答えを出して指示する”指示命令型”のマネジメント文化があります。
先が読みにくい今の時代、対話を通じて意味を生み出す対話型ODのアプローチはますます重要になっています。着地点が見えないことを恐れるのではなく、その不確かさの中で一緒に考えることを選ぶ——それがこれからの組織とチームに必要なことだと感じています。
つなばでは、対話を通じてチームと組織を変える実践をさまざまな形でご支援しています。
ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
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