対話の効果はいつ出るの?数字に表れないチームの変化との向き合い方

対話っていいな、チームに取り入れてみたい……。そう感じている方はきっと少なくないと思います。けれどいざ「それって、どれくらい効果があるの?」と聞かれたら、なんと答えますか?自分では確かに良さを感じているのに、上司にも一緒に働くメンバーにも「たしかにいいね!それならやってみよう!」と思ってもらうところまでなかなか届かない。そうしてもう一歩が踏み出せないまま、時間だけが過ぎていく。

対話の効果はどんなふうに現れるのか。なぜすぐには見えないのか。そして、それをどう人に伝えればいいのか。「対話の効果は漢方薬のようなもの」という見方を手がかりに、一緒に考えていけたらと思います。

効果は感じている。でも、人に伝わる言葉にできない

対話に関心を持つ方はたいてい、何らかの形でその効果をすでに知っています。研修やワークショップで場の空気が変わる瞬間に立ち会ったり、誰かと深く話せたときの手応えを覚えていたり。だからこそ「うちのチームにも」と思うわけです。

難しいのはその先です。自分が感じている効果を人に伝わる言葉にする。そして相手も「たしかに効果がありそうだ」と腑に落ちて、「じゃあ、うちでもやってみよう」と動いてくれる。ここまでがいちばん高い壁になります。

しかも対話はともすると、雑談やいつものおしゃべりの延長のように見られがちです。「わざわざ業務時間を割いてやることなの?」と問われると、返す言葉に詰まってしまう。会議で「対話の時間を取りませんか」と切り出した瞬間に、「それ、いま必要?」という空気が流れる。そんな経験をした方もいるかもしれません。効果を感じているのは確かなのに、それを示す物差しが手元にない。だから上司にもメンバーにも、自信を持って切り出せない。この「感じてはいるのに、伝えて動かせない」もどかしさに、まずは名前をつけるところから始めましょう。

数字で測れなくても、変化はちゃんと起きている

そもそも「効果」と聞かれたとき、いちばん説明しやすくて相手にも伝わりやすいのは数字です。離職率が何パーセント下がった、エンゲージメントのスコアが上がった。こうした数値で示せたらそれはそれで大切ですし、説得力もあります。

ただ対話の効果を数字で示すのは、思うほど簡単ではありません。数字で測るには「ここに、これくらいの効果が出るはず」と、あらかじめ見当をつけておく必要があります。でも対話は人の心に効くものです。その影響はいろいろなところに、思いがけない形で広がっていきます。だから前もって決めた場所に、予測どおり現れるとは限りません。離職率が下がったとしても、それが対話のおかげなのか別の要因なのか、きれいに切り分けるのも難しいものです。

では効果がないのかというと、そんなことはありません。対話の効果はもっと感覚に近いところに現れます。会議の空気がやわらかくなった。これまで言いたそうにして黙っていた人が、自分から口を開くようになった。意見がぶつかっても、誰かを責める空気にならなくなった。決まったことに「実はちょっと気になっていて」と、後から声が上がるようになった。数字には表れないけれど、その場にいる人ははっきり感じている。そういう変化です。

そして私がいちばん大事だと思うのは、こうした変化を一人ひとりが自分の実感として持てているかどうかです。立派なスコアよりも「前より話せるようになった」と本人が感じられること。対話を生かしたチームづくりの土台になるのは、結局そこだと思うのです。

対話の効果は、漢方薬のようなもの

私は対話の効果を説明するとき、対話は「漢方薬」のようなものですと、いつもお伝えしています。

西洋薬は頭痛なら頭痛にピンポイントで効きます。早いし、わかりやすい。一方で漢方薬は時間をかけて体質そのものを整えていきます。すぐには効かないけれど、続けるうちに気づけば疲れにくくなっている。そんな効き方をします。

対話はこの漢方薬によく似ています。「急いては事を仕損じる」という言葉のとおり、始めてすぐに目に見える変化が起きるわけではありません。けれど続けるうちにチームや組織の体質が、ゆっくりと変わっていく。だから対話はただのおしゃべりではなく、時間をかけて効いていく、れっきとした営みなのだと思っています。

このことは、長く対話に取り組んできた会社が教えてくれます。たとえば丸井グループは二十年近くかけて「対話の文化」を育ててきました。社長の青井浩さんは、短期的なリターンを求めるとかえって逆効果になる、文化が根づいた結果としてイノベーションが生まれる、その順番こそが本来なのだ、という趣旨のことを語っています。即効性ではなくゆっくり効く。まさに漢方薬の考え方です。

海外にも似た例があります。アウトドア用品のパタゴニアは1991年に売上が落ち込み、社員の二割を手放さざるをえない危機に直面しました。そのとき創業者は「そもそも自分たちはなぜこの事業をやっているのか」を問い直し、幹部たちを社名の由来であるアルゼンチンのパタゴニア地方へ連れて行って、時間をかけて話し合ったといいます。そこで生まれた価値観の言葉が、今もこの会社を支えています。会社の規模も国も違いますが、効果を急がず時間をかけるという考え方は同じです。対話とはそういう営みなのだと、二つの歩みが教えてくれます。

振り返ったときに、はじめて見えてくる

漢方薬がそうであるように、対話の効果も効いている最中はなかなか自覚できません。

おすすめしたいのは、ときどき立ち止まって始める前と今を比べてみることです。半年前、一年前のチームを思い出してみてください。あのころは会議でほとんど発言が出なかったな、とか。意見がぶつかると、しばらく気まずさが残っていたな、とか。それが今はどうでしょう。

そうやって振り返ったとき「あ、変わってきているな」と、はじめて気づくことが多いのです。日々のなかでは小さすぎて見えなかった変化が、時間という距離を置くとちゃんと形になって見えてくる。毎日いっしょにいると子どもの背は伸びて見えないのに、去年の服が小さくなって成長に気づく。あの感覚に近いかもしれません。

すぐに変わらないからこそ続ける意味があります。そして続けた先で振り返るからこそ、その変化に出会えます。効果がなかなか見えないときも、止まっているのではなく静かに進んでいる時間なのだと思っておけたら、少し気持ちが楽になるかもしれません。

まずは、小さく始めてみる

とはいえ効果が数字で見えないものに、いきなり大きく踏み出すのは勇気がいります。だから小さく始めてみることをおすすめします。

まずは有志で集まってお茶を飲みながら話す会のような形からはじめてみるのはどうでしょうか。あるいはいつもの会議の冒頭に、五分でも十分でも対話の時間を設けてみる。

会議の時間に組み入れる場合、対話の時間は最後ではなく、冒頭に置くのがおすすめです。会議の終わりごろにはもう、決まったことや次の段取りでみんなの頭がいっぱいになっています。その状態だとひらかれた話はしにくい。まだ頭がやわらかい冒頭のほうが、思っていることを素直に出しやすいのです。

「ジャッジしない」「無理にまとめない」といった軽いおやくそくをいくつか置いておくと心理的安全性の醸成にも役立ち、話しやすい場になります。全員に話すことを強制せず、話したい人からぽつりぽつりと話せれば、それで十分です。

あとはすぐの変化を探さないこと。効果を急がず、時間を味方につけるあり方でいられたら、それがいちばんの力になります。小さな手応えを見つけたら、ひとことメモしておくのもおすすめです。後で振り返るときにきっと役に立ちます。

最後に

「なんか楽しかった」ね、だけで終わってしまう時間もあるかもしれません。
一回一回の対話を評価せず、続けた先に振り返ってみると一回ずつでは見えなかった変化が見えてくると思います。

そのために「なんのために対話するのか」「対話を通して、自分たちはどうなりたいのか」を具体的に思い描いておくことをぜひおすすめします。

この二つが思い描けていると、続けやすく、変化にも気づきやすくなります。漢方薬もどんなふうに元気になりたいかが見えていれば、飲み続けられます。対話もそれと同じなのです。

対話によってみなさんの周囲が少しでも居心地の良い場所になりますように。

つなばでは、対話をチームや組織に根づかせていくお手伝いを、単発の対話型ワークショップや、対話型ワークショップを複数回実施する伴走プロジェクトを通じて行っています。「うちでも始めてみたい」「何から手をつければいいのかな」と思われたら、つなばが一緒に最初の一歩を考えます!

つなばについてはこちらから、ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

関連記事

心理的安全性、再考。健全な対立と学習するチームをつくることとは

対話型組織開発を読む① そもそも「組織開発」って何?

対話で変わるチームづくり実践ガイド|話し合いを見える化して信頼関係を築く方法

PAGE TOP