対話は世界平和になる

対話は「世界平和」につながると私自身は真剣に思っているのですが、一方でそれを口にすることに少し照れを感じてしまうことも多いです。
「世界平和」という言葉がとても大きいものに感じるからかもしれません。
私は、世界中の活動家のように、著名でも力が在るわけでもないのですが、だからこそできる「世界平和」の目指し方もあると思っています。

まずは私の半径3メートルから。いや、なんならお隣から始めようと思って続けてきました。草の根運動です。

「世界平和」

これは決して大げさな話ではなく、ワークショップの場で起きている小さな出来事の話です。

対話の場では、当たり前にできていること

つなばのワークショップやセッションでは、こんな光景がよくあります。

誰かが本音を話す。まわりはそれを否定せず、まず受け取る。ネガティブな気持ちが出てきても、無理にポジティブに変換しない。違う意見が出てきても、「間違っている」ではなく「そう見えているんだね」と扱う。

これは特別なスキルというより、その場に流れているお約束のようなものです。参加者は口には出さなくても、その場にいる間は自然とこの姿勢を持ちます。
実際に、この場のお約束として参加者に伝えることもあります。

輪になって対話するワークショップの様子

以前のコラムで書いた「Yes, and」も、「心理的安全性」も、実はこの一つのことを指しています。

まず受け取る。変えようとしない。それから、一緒に考える。

対話の場では、これがものすごく自然にできてしまう。

問題は「対話の場を出た瞬間」に起きる

ここで不思議なことが起きます。

ワークショップの中では「まず受け取る」を大切にしているつもりなのに、会場を出て日常に戻った瞬間、家族の愚痴には無意識に「でも」から言葉を返してしまう。SNSで自分と違う意見を見かけると、つい心の中で反論を組み立ててしまう。恥ずかしながら、これは他人の話ではなく私自身の話です。

対話の場でできていたことが、対話の外に出ると途端にできなくなる。

対話の場と日常の会話での姿勢の違い

これは責められることではありません。日常のコミュニケーションには「まず受け取る」を邪魔するものがたくさんあります。時間がない。相手のためを思うほど、つい正論をぶつけたくなる。SNSやニュースを見ているときは特に、じっくり受け取るより先に、反応する方が早い。

対話の場は、いわば「まず受け取る」を練習するための温室です。温室の外に出れば、当然、育てたものは弱ってしまいます。

でも、もしこの温室の中の姿勢が少しでも外の世界に持ち出せたなら、きっと世界は変わりますよね。

対話で大切にされていることは、対話の外でも使える

戦争や分断のニュースを見るたびに、根っこにあるのは同じことだと感じます。

「自分たちの言い分を受け取ってもらえない」という感覚。「相手はどうせ分かり合えない」という諦め。「まず変えようとする、まず正そうとする」という関わり方。

これはワークショップの場で「Yes, and」ができていないときの空気と、驚くほどよく似ています。規模も深刻さもまったく違いますが、根っこの構造は同じです。

だとすれば、対話の場で育てている姿勢は、家庭や職場だけでなく、もっと広い場所でも意味を持つはずです。

  • 家族の話を、解決策を出す前にまず「そうか」と受け取ってみる
  • 意見の違う人の投稿を、反論する前に一度「そう見えているんだな」と置いてみる
  • ニュースの向こうにいる人たちを、「間違っている集団」ではなく「違う景色を見ている人」として見てみる

一つひとつは、ささやかすぎて拍子抜けするようなことです。世界平和とは程遠く見えるかもしれません。

平和は、大きな決断ではなく小さな習慣からできている

でも、大きな分断も、突然生まれるわけではありません。「まず受け取ってもらえなかった」という小さな体験が、何度も積み重なった先に生まれます。

だとしたら、その逆もまた成り立つはずです。「まず受け取ってもらえた」という小さな体験の積み重ねが、信頼をつくり、対立を減らし、いずれ大きな単位での平和につながっていく。

チームの中で「Yes, and」が積み重なると心理的安全性が育つように、社会の中でも同じことが起きるはずだと、私は思っています。飛躍しているように聞こえるかもしれませんが、スケールが違うだけで、起きている現象は同じです。

小さな対話の積み重ねが広がっていくイメージ

つなばが対話の場をつくり続けているのは、単にチームの生産性を上げるためだけではありません。対話の場で育てた小さな姿勢が、参加者一人ひとりを通じて、対話の外の世界にも少しずつにじみ出していってほしいと思っているからです。

おわりに

「対話は世界平和になる」というタイトルは、多分に願いを込めています。

一つの対話のワークショップが世界を変えるとは思っていません。でも、その場で育った「まず受け取る」という姿勢を持った人が一人でも増えていけば、その人が関わる家庭や職場、そしてその先の社会は、確実に少しだけ平和に近づくはずです。

大きな理想を語るより、目の前の一つの対話を大切にすること。つなばはこれからも、その積み重ねを続けていきます。

つなばでは、対話の姿勢を体感できるワークショップや、チーム・組織向けの対話型プログラムを提供しています。「うちのチームや自分の日常にも、この考え方を取り入れてみたい」と思ったら、ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせはこちら tsunaba.com/contact/

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